第44章 傷が消えるまで永遠にー過去の記憶ー
「あちゃー……」
全部見せたが、終わる頃には安城殿は頭を抱えていた。
「壱ノ型はいいわ。でも他の型はダメね。動きはできてるけど、呼吸は為ってないわ。」
「……」
「困ったわねえ。私は雷のことしか知らないし。…呼吸の仕組みくらいなら教えられるかしら?今から雷に転身させるのはよろしくないし……。」
ぶつぶつとつぶやいていたが、私は何を言っているのかさっぱり理解ができなかった。
「……育手に任せようったって…」
彼の中で結論は出なかったらしい。
「霧雨ちゃん、壱ノ型はできているから…それを元にコツを掴んで他の型に生かしていくしかないわ。」
「……」
「頑張りなさい。」
そう言われて、よくわからないまま頷いた。
ここからは相当の地獄で…文字通り、私は夜通し刀を握った。
「ぎゃっ」
朝になって帰宅した安城殿は、私の姿を見て悲鳴を上げた。
「え?あ、あんた、なんで起きて……?え?て、ていうか、何して……」
ワナワナと震えていた。
地面は歪にボコボコにゆがんでいる。打ち込みだいはひしゃげており、与えられた刀の柄は真っ赤に染まっていた。手は豆が潰れており、足は爪が剥がれていた。
「ずっと呼吸の練習してたの!?なんで!?」
肩を掴まれてガタガタ揺らされた。
「なんとか言いなさいよ!!あんた、もう話せるじゃない!!」
あまりにも必死な様子に首をかしげた。どうしてこんなに慌てているんだろうか。
「わたし、いわれたのです」
「……は?」
「あんじょうどの、わたし、がんばりなさい、いった、のです」
彼はポカンとしていた。
「…あんた、それだけのことでこんな……」
「?」
「どうして」
安城殿はぎゅっと私を抱きしめた。どうしてそんなことをするのか理解できず、また首を傾げた。
「…治療しなきゃ」
その声が湿っぽくて、震えていた。
「あん、じょ、どの・だいじょぶ、?」
「……私はなんともないわ」
安城殿は優しく治療をしてくれた。体も綺麗に拭いてくれて、手足を包帯でぐるぐる巻きにされた。
いつも自分でやりなさいと言うのに、ここまでしてくれるのは初めてだった。