第44章 傷が消えるまで永遠にー過去の記憶ー
天晴さんの屋敷に戻ることには朝になっていた。そこにつく頃には朝になっていた。
太陽が登っていて、実にいい天気だ。帰り道も足から血が出てしまって、安城殿がおぶってくれた。
「痛いなら言いなさいってさっき言ったわよね〜どうして血をダラダラ垂らして歩いてるのよ。次こそはちゃんと言いなさいね。」
「はい、わたし、いうのです」
「返事だけは立派…まあ、私がやれって言ったんだけど」
安城殿はははっと笑いながら私を部屋まで連れて行ってくれた。足の治療までしてくれたけど、彼はため息をつく回数が増えていた。
「はああ〜それにしても霞の呼吸の使い手だったなんて…雷の呼吸を継承させようと思ってたのにいいい」
先ほどからそんなことばかりだった。
「わたしすてられるのです」
「……は?」
「あじょ、どの、わたしすてるのです」
彼はぺしょんと、雨に濡れたみたいにしっとりした気配を体から発した。
「いやねえ、こんな言葉だけスラスラ言えちゃうんだもの。」
「あじょうどの、わたしすてるのです」
「アンジョウ。あじょうじゃないわ。捨てないわ、大丈夫よ。」
いつものようにこりと笑ったが、彼の感情は変わらなかった。
「でも不思議ねえ。どこで霞の呼吸なんて教わったのかしら。覚えてる?」
「……」
「覚えてるなら言いなさい。」
私はそこで口を開いた。
「わたし、みたの、です」
「見た?霞の呼吸を?」
「わたし、そう、のです」
「……見ただけ?教えてもらったんじゃなくて?」
「わたし、み・たのです」
安城殿は驚いているようだった。なぜ驚いているのか分からず、ただその様子を眺めていた。
「……ねえ、壱ノ型しかできないの?他の型は?」
「わたし、みたのです」
「やってみなさい」
任務終わりということも忘れているようで、私は木刀を持って庭に立たされた。
ということで披露してみたのだが…。