第44章 傷が消えるまで永遠にー過去の記憶ー
私を庇うように抱きしめ、刃を振るう。そこには鬼がいた。…瞳に何やら文字が書いてあるが、速くて見えなかった。
「下弦…!」
しかし、安城殿には見えたらしかった。
「わたしあそこのです」
「は!?」
さらに違う方向を指さすと、そこからも鬼が現れた。二体同時に現れたのだ。
「チッ。霧雨ちゃん、離れちゃ…」
彼の言葉より、私の防衛本能が働く方が先だった。
すぐさま抜刀。
勢いよく踏ん張ったせいで傷が開いたのか包帯に血が滲んだ。しかし、負けじと飛びかかった。
_____霞の呼吸、壱ノ型
刃先を鬼の頚に突き立てた。
_____垂天遠霞
体を回転させ、勢いよく体を捻って力をためる。串刺しにするように鬼の頚に刀をぶっ刺した。
体の周りに何か霞のようなものが見えた気がしたが、気のせいだろうか…。
「はああああああああああああ!?霞いぃ!?!?なっなんで!?なんでなのおおおおお!!!!!」
頚を刺されて動けない鬼よりも、下弦と呼ばれた鬼が彼の足元でさあっと砂のように溶けて消えていた。
「…雷の呼吸の使い手にしようと思ってたのに。」
なぜかガッカリとしていた彼。私は頚を傾げてその様子を眺めていた。
「ぶっ刺しただけじゃダメ!鬼は頚を斬り落とすまでは殺したと言えません!!」
その後、彼が難なく鬼の頚を斬ってくれたので怪我はなくその任務は終わった。