第44章 傷が消えるまで永遠にー過去の記憶ー
いつも夜は外に出ていくなと言われていたので、夜に外に出るのは初めてだった。
「霧雨ちゃん、あんたこれ持ちなさい。」
「はい、もつ、ので、す」
「…お話しするときは主語を入れて話すのよ。」
「はい、わたし、もつの………でう」
「……早くスラスラ話せるようになるといいわね。」
持てと言われた刀を持ち、私は彼について行った。
心の中では話せるのに、声にはならない。言葉を組み立てられない。喉がうまく動かないのだ。
この人はそれを知ったらどうなるのだろうか。
ていうか、刀ってなんで?なんでこんなもの持つんだろう。
「抜刀できる?やってみなさい」
刀をするりと抜く。
「はい、わたしできるのです」
「ああよかった。じゃあ、この着物だと…帯のここに、刀をさして…」
大きな刀を引き摺るように腰にぶら下げ、私はそのまま彼について行った。いつもなら歩幅を合わせてくれているのに今日はそうではなかった。それでもついてこいと言われていたのでついていった。
途中で草履が脱げた。脱げたというか、長距離移動に耐えられずボロボロになってちぎれた。
刀が重くてうまく歩けない。けど、小走りではないと安城殿にも追いつくことができない。
「ふう、ここが任務場所ね…けっこう走ってきたけどあんた平気で…」
振り返った時、安城殿は目を丸くしていた。
「あ、あんたボロボロ!!着物も崩れてるし、ていうか裸足じゃない!ああ、足から血が出てるし…!」
彼は私の足の治療をしようろした。
私はしっかりと刀を持ってその様子をぼんやりと眺めていた。
「刀持ってる場合か!!なんとか言いなさいっての!!」
「はい、わたし、かたなも、つので・す」
「今はいい!離しなさい!!」
私はパッと手を離した。がしゃんと音を立てて刀は地面に落ちた。安城殿は私を座らせて包帯を巻いたり、代わりの草履を用意したりとしてくれた。
「痛い時はちゃんと言いなさい。」
「はい、イタイ、言うの、です」
「もう!」
流石に今回は怒ったようだった。
しばらくしたらまた刀を持って私は彼について行った。