第43章 傷が消えるまでずっとー過去の記憶ー
どこか冷ややかな目で慎寿郎さんが天晴さんを睨んでいた。それに気づいたのか、彼は肩をすくめていた。
「あー、ちょっとそれは誤解よ。捨てるって言ってもあんたを裸で放り出すわけじゃないわ。クソな母親と一緒にしないでくれる?」
「天晴!」
「うっさいブス」
さぞ機嫌を悪くしたのか、ためらいもなく誹謗中傷の言葉が口から出てきていた。
「捨てろ捨てろって何回言ってもこのおっさんはあんたを捨てなかった。ここにいる人間は良い奴なの。理解した?」
「いつ、すてられるのだ」
「話聞いてた?てか何よこのしゃべりかた。おっさんの話し方うつってんじゃないの。」
「や、やかましい!」
はあ、と天晴さんはため息をついた。
「でも、これ以上あんたを慎寿郎の家に置いていたら他の人たちが黙っていないわ。文句言う奴が多すぎてかくまっていられないのよ。」
「そんな馬鹿正直に言わなくても…」
「私は子供扱いなんてしないわ。もう一人の人間でしょ。この子。」
天晴さんは真剣だった。
「この家は、人が多すぎるのよね。慎寿郎はお客さんもよく訪ねてくるし。」
「………」
「あんた、ウチに来る?」
その発言には煉獄家の人たちも盛大に驚いていた。
「どうしてお前が引き取るんだ!?」
「あらあ、前から考えていたのよ?」
天晴さんの元に行く準備をしていた時、慎寿郎さんがやはり口を出した。
「柱で話し合った時、あんたのところに置くのは長くても数ヶ月って話だったでしょ?私が預かるときの話は出ていなかったもの。」
「お…お前ええええええええええええええええ」
「は?きもっ」
そんなことなら早く言え!と喚く慎寿郎さんに天晴さんは辛辣だった。
「ただし、私のところで預かるなら寺送りになんてしないで、育手送りにするわ。」
「は?」
「この子の行く場所なんて、もう多くはないでしょう。訳ありな子なら…鬼殺隊がうってつけよ。」
「ま、まて、その子は…」
「良いから。」
私はぐいっと天晴さんに手を引かれた。
「もう甘ったるいあんたの世話にはなんないから!」
私を引っ張り、わずかな荷物を担いで天晴さんはズンズンと歩き出した。慎寿郎さんと瑠火さんは最後におにぎりを持たせてくれた。