第43章 傷が消えるまでずっとー過去の記憶ー
色々なことを教えてもらったが、少々私には難しかった。覚えの悪い私はろくなこともできぬままだった。
まあ良い。
いずれは寺に連れて行かれるのだろう。そういう話だったから。
ここにきてどれほど経っただろうか。私はそれほど長い間、このお屋敷にいた。
「……あんた、よく続いてるわね」
たびたび天晴と言う人が訪ねてきてはぐちぐちと小言をこぼしていった。
「どうせすぐ投げ出して終わりだと思っていたけれど…」
「投げ出すような真似はしないさ。」
「…でも、もう時間切れでしょ?」
ある日、私はぼうっと二人の話を聞いていた。二人は私が近くにいることに気づいていないらしかった。
「あの子はもう、これ以上どうにもならないわ。ずーっとニコニコ笑ってるだけだし。」
「…そんなことはない。本当にいい子なんだ。立ち振る舞いも綺麗な子で……。」
「だめよ。柱で話し合ったじゃない。どうにもこうにもならないなら、寺送りにしようって。」
「そんな厄介払いのような言い方は寄せ!」
「事実じゃない。」
二人はいつも喧嘩をするように話していた。恐らく、元からあまり仲も良くないのだろう。
「この二ヶ月、様子を見てきたけど…誰かの指示がないと動こうともしない。会話もままならない。もう見限るには十分よ。」
「あの子は何年も苦しい環境にいた…わずか数ヶ月でどうにかなるものではない!」
「それを承知で見捨てろって言ってんの!!いい!?」
どんどん声量が大きくなっていた。その声に引かれるように、杏寿郎くんと瑠火さんがやってきた。
立ち尽くして二人の怒鳴り声を聞く私に、瑠火さんは目を丸くしていた。
「いけません、遠くに行きましょう。杏寿郎と遊んできなさい。」
そう言われて私は動いた。後ろでは相変わらず二人が口論を繰り返していた。