第43章 傷が消えるまでずっとー過去の記憶ー
「彼女は、自分に危害を加えられるか、『しなさい』と言われるまで動かないようだ。」
周りの人たちがハッとしたように目を見張った。
「…え」
砂利の上に座り込んでいた人は立ちっぱなしの私を見てポカンとしていた。
「確かに。」
「では、この子が斬った隊士は『自分を殺しなさい』、と言ったのではないかな?」
すると、慎寿郎さんの烏がそれを肯定した。
「………と、言うわけだ。君たちの主張もわかるが事実がこう言っている。私には殺せとは言えないね。」
「…!!」
「さて、この子の処分だが。」
すると再び場に緊張が走り、天晴さんは慌てて地面に膝をついた。
「柱に一任する。」
「な…!」
全員が唖然としていた。私はただ地面の砂利を見つめていた。
「え、それって、私たちがこの子を殺してもいいってこと?」
「そうだよ。」
「ちょっと!こんな訳ありな子を丸投げなんてやめてよ!!」
天晴さんは激昂していたが、私はその理由がわからなかった。
「春風は私と一緒にこの子の身辺調査をしようか。」
「……承知いたしました」
なぜか春風という人だけはこの任から外れたようだった。そこでその場に集まっていた人たちはバラバラになったけれど、まだ庭には柱と呼ばれた人たちが残されていた。
「この子は私が預かろう」
慎寿郎さんがしゃがんで私と目線を合わせた。
「あんたバカなの?私たちがそんなことしてたら世の中の困ってる人全員助けないといけなくなるじゃない。適当に寺にでも送り出したらいいじゃない。」
「しかし、寺に入れるにしても…」
「あんた奥さんいるし、子供も小さいのに勝手に預かるとか言っちゃって言いの?」
「…っ、そ、それは」
周りの柱はさっと視線を逸らした。
「………言い出したのあんたなんだから撤回はなしよ。」
天晴さんはギロリと彼を睨んだ。
「ああ、なんの問題もない。ほら来なさい。」
冷や汗を垂らしていたが、彼は笑顔で私の手を握った。私はただその人について行った。