第43章 傷が消えるまでずっとー過去の記憶ー
「じゃあ、検証しよう。この子が本当に人を殺すような子なのかを。」
お館様は私を見下ろした。私は一人だけ中央に座らされていた。
「天晴」
「は、私?」
「そう。君が相手をしてあげて。」
その人は嫌そうにしたが、長い髪をはらったが何も言い返さなかった。
「さあ、その子の目の前に立って。」
そうしてその人は私の前に立った。他の人たちは円を作るように私たちの周りに広がり、傍観していた。
「……………」
ただ座ったまま砂利を眺め、私はピクリとも動かなかった。
「うん。何もしないね。」
「……いや、そりゃあなんにもしないやつに攻撃とかしないでしょうよ。」
天晴さんは悩ましそうにため息をついた。
「天晴。その子に少し乱暴をしてみてくれ。」
「!慎寿郎。」
「大丈夫だ、春風。…天晴、フリでいいぞ。」
慎寿郎さんの指示を私はいまいち理解できていなかった。私は砂利を眺めたまま座り込んでいた。
「しょうがないわねえ」
次の瞬間、彼の手刀が私めがけて振り下ろされた。
「!!」
その瞬間立ち上がり、低く沈んだ。彼の懐に潜り込み、その足にしがみついた。
「わっ、ちょっと」
バランスを崩した彼がどすん、と派手に倒れた。私は押しつぶされるかと思ったが、彼は咄嗟に体制を変えた。
「あっ……ぶないわねえ!私がぺちゃんこにするところだったわ、あんた!!」
その人は勢いよく飛び上がり、まだ足にしがみつく私を引き剥がそうと必死になっていた。
「は、離して!離しなさいよ!!!私あんたに当ててないじゃないのよ!!離しなさい!!!」
私は彼から手を離した。ゼエハアと荒く息をしていて、彼は両手を上げた。
「降参よ。なんなのよ、もう。潰しそうで怖いわ。ほっそいし、軽いし、折っちゃいそう。」
「…うん、これで検証は終わりかな。」
お館様は天晴さんに構わず、にこりと笑っていた。