第43章 傷が消えるまでずっとー過去の記憶ー
ずいぶん長いこと歩いた。そこでついたのは大きなお屋敷だった。
「…!足が」
そこでその人は私の足が血だらけなことに気づいたらしい。何年かぶりにたくさん歩いたので、足がボロボロになっていた。
「すまない、すぐに治療をしよう。さあ中へ…。」
またその人について行くと、玄関でその人は何やら叫んだ。その時現れたのは、綺麗な女の人と小さな男の子だった。
「お帰りなさい、父上!」
「ただいま、杏寿郎。」
「…その子は?」
男の子が私を見て首をかしげた。女の人もそうだった。
「お館様に一任されてな。なに、しばらくの間だ。私が面倒を見るから大丈夫だ。時期を見てこの子の行き先は考える。」
「…し、しばらくとは…この子はいったいどこの子供なのですか?」
「それをいま調べていらっしゃる。すまん、他の柱は前向きではなかったから…。」
言い訳をしながらも彼は私を奥へと連れて行った。風呂場までいき、ひとまず足の血を洗い流してくれた。
「治療は風呂の後がいいな。女ものの着物はあまりないが、しばらく待っていなさい。」
そう言われたので待っていた。
その後その人はどうにかこうにか私の体を見ずに風呂に入れようとしていたが、結局は奥方様にしてもらっていた。
「年頃なんですから」
そう言って私を洗う手つきは優しかった。
お風呂から上がってほかほかと久しぶりの感触に浸っていると、杏寿郎くんがじいっと私を見つめてきた。
「母上、綺麗な人ですね」
「…そうですね。けれど、ずいぶんと痩せている……」
女の人は私に手を伸ばした。それに反応しようとしたが、慎寿郎さんがぽん、と優しく私の肩を叩いた。
「おそらく食事をとっていなかったのだろう。」
「では、粥がいいでしょう。」
しばらくとしないうちに食事が運ばれてきた。
それをぼんやりと見つめていると、慎寿郎さんに食べなさいと言われてそれを口にした。