第43章 傷が消えるまでずっとー過去の記憶ー
「出産に関する本が部屋中に散乱していましたし、何より室内に広がる液体や…出産後に母体から出るものなどがありましたから。」
長髪の天晴という人は口元をおさえて呻き声まであげていた。
それを見た春風と言う人がなんのためらいもなく彼の頭を鷲掴んで砂利の上に叩きつけた。
「…!あんたっ!!何すんのよ!!」
「お前、うるさいよ」
静かだったが、明らかに怒っているようだった。
「場の空気を壊すなら出て行ったらどうかな?」
「ッ!!!」
「子供の前でやめないか!」
険悪な空気が広がったが、慎寿郎さんの一言で二人は黙った。
長髪の人は額からたらりと血を流していて、人でも殺すような顔で血を拭っていた。
「…それででして、おそらくこの子が殺したのは……その、子供の父親かと」
聞くに耐えないのか長髪の人は耳を塞ごうとしていたが、その手を春風さんが引っ叩いていた。
「……この子に聞かなくては真相は分かりませんが、隠たちと現場を検証した結果です…」
「そうか…。では、ほとんど間違いないだろうね。」
ようやく嫌な話が終わり、天晴と言う人は変な動作をやめた。それでも春風さんは一発頭頂部を殴っていた。…なぜ?
「その子の今後について話そうと思うんだけど、意見を言いたいという子たちが来ていてね。」
その時、少し遠くにあった気配が近づいた。先程の隠…と言う人と、黒い服を着た見覚えのある顔だった。
その二人は私を睨み、憎悪の視線を向けてきた。
「え〜?なんで下の奴らが来てるのよ…」
天晴さんがその二人を見てこぼした。その一言に萎縮したようだが、彼らは膝をついてお館様に頭を下げた。
「お館様、この子供は人間でもありません…!!」
そして、自分たちの主張を続けた。
「僕らの仲間である隊士を殺しました!俺はその瞬間を見ていたんです!まだ、鬼にもなっていなかった、人間をです!!!」
私はその主張をぼんやりと聞いていた。