第42章 身を尽くし
別に秘密にしていたわけではない。誰かに隠そうとしたわけでもない。私は、いつだってみんなを疑わない。
信じたかった。
アリスちゃんを信じたかった。それだけだった。
「童磨が捕まったそうだな」
あの騒動から数日後、冷え切った秋空の下で巌勝と私は話し込んでいた。
「うん、捕まえてやった」
「…まさか一人でやったのか?」
「まあ色々あって」
いつしか、実弥に水をぶっかけた公園で話し込んでいた。もちろん手にはアリスちゃんのお手製のり弁当。
「…呆れる。連絡を寄越せば私も加勢したものを。童磨を捕まえるともなれば喜んで馳せ参じた。」
「どんだけ嫌いなのよ…。」
私はため息をついた。…やっぱり、こいつと食べると味がしない。
「今回は私のわがままだよ。最後の最後まで信じていたかったの…アリスちゃんをね。」
「弁当屋の店主のことか。」
「そう。…信じていたかったとか言いながら、思いっきり怪しんでたけど。」
巌勝は顔をしかめた。
「まさか、あの者が童磨の手に落ちていたと?」
「そのまさかだったよ。」
「…わかっていながら近くにいたのか?お前は死ぬ気か。」
「だから、そういう風に疑いたくなかったの!私のわがままで!!」
必死に訴えるも巌勝は厳しい態度を崩さなかった。
「貴様のわがまま一つで誰がどうなるかわからなかったのだぞ。」
「……そうだけど」
「お前は結局一人で全てやったのだ。」
責めるような口調に何も言い返せなかった。…ぐぬぬ。言葉が冷たいよお。怖いよお。もう嫌だよお。
「それで、なぜあの女店主にお前は疑いを持ったんだ。」
泣きそうになりながら耐えていると、彼はそれに気づいたのか少し柔らかい話口調になった。
ああ、そのことかと私は気を取り直して話し始めた。