第41章 可哀想な人
おかわりが欲しい、と言われたので用意をするために台所へ向かう。
「やり方教えてくれれば自分でやるから…」
「実弥は作り方知らないでしょ」
ちょこちょことついてきた実弥はぐうの音も出ないみたいでただ黙って見ていた。よし。今度こそ失敗しない。出汁は少なめ、かつ味噌は自己主張強めで…!!
自分の料理に美味しいなんて滅多に言われないものだから、私はいつもより気合を入れて張り切っていた。
タッパーから味噌を取り出し、調味料と混ぜ合わせて慎重に味噌だれを作る。
「味噌」
「全集中してる。話しかけないで。」
「いや、その」
「何」
実弥は味噌の入ったタッパーをマジマジと見つめた。
「まさか、手作り…」
「そうだけど。」
よし。うまく混ざった。味噌ダレは完成したので…。
「は、嘘。味噌が手作り?」
「え、何言ってるの。ずっと味噌は手作りだよ。」
「は」
実弥はタッパーを持ってポカンとしていた。
「…知らなかったとか?」
「…おう」
「まあそれはいいんだけど」
お皿に出汁少なめで大根をよそった。…馬鹿でかいと言われたので一応、菜箸で半分に切っておいた。
「私って美味しくご飯作れないじゃない?ご飯は食べられるだけ贅沢だから、私はそれでもいいんだけど…君のことを考えるとね。」
「……」
「作れるものは作ってみようと思ったの。まあ、それでもまずいことに変わりはないんだけど。」
実弥にお皿を差し出す。彼は静かにそれを受け取った。
「……俺はお前の料理好きだよ」
「え」
「…美味しい、よ」
顔を見ずにそう言ってプイッとそっぽを向いて元の場所に戻ってしまうので、私は慌てて追いかけた。
「ええ〜ん!もう一回言ってもう一回言って!!」
「美味しいよ」
「そういう大切なことは目を見て言ってよ!!!」
実弥はずっと目を逸らしていた。照れている……というより、多分…私の目を見ていうと嘘ってことがバレるんだろうな。ははっ。
「〜〜〜っ!わかったよ!」
と、思っていたがそうではないらしかった。
「……俺のために頑張ってくれるのが嬉しいんだよ…ありがとう」
思いがけない言葉が彼の口から出てきて、私は赤面した。実弥も顔を真っ赤にしていた。
それからは二人で真っ赤になって、黙々とご飯を食べ進めた。