第41章 可哀想な人
5分ほどで部屋を片付け、ご飯を作ることにした。明日のことを考えると実弥は早くに寝た方がいいし。
実弥は自分が作ると言って聞かなかったが、突然こっちに車を飛ばして疲れているのは確かなようで、しつこく言っては来なかった。
先にお風呂に入ると言うのでその間にご飯の支度をした。
「何作ってんの?」
そのうちお風呂から上がってきた実弥がひょっこり後ろから顔を出した。
「さては久しぶりに私のまずいご飯が食べられるって浮かれてるな!?どうでもいいけど髪の毛をちゃんとふいて服を着てください!!」
「あ、悪い」
最近はずっと一人だし変な癖がついたのかもしれない。でも今にも水が髪の毛から垂れそうだし、上半身裸だしわけわからない。
服を着て体をふいた後もちょろちょろしているので、私はギロリと睨みつけた。
「座れ邪魔だ」
そう言うと実弥は大人しく席についた。
…アリスちゃんと暮らしているうちにあの勢いがうつったかもしれない。言いすぎたね。ごめんね。絶対口に出してやらないけど。
できた料理を机に並べる。
二人で手を合わせて箸を持つ。
「どうだ、まずいでしょ」
「……………」
実弥は青い顔をしていた。
ははっ。実弥と住んでた時は、彼が食べるから申し訳ないと思って努力していた。
しかし今や一人。解き放たれた私はご飯をより適当に済ませるようになった。栄養だけはきっちり管理しているけれどね。
食べられるだけ贅沢だと思っているので味にこだわりはない。…私一人ならいいんだけど、実弥に食べさせるのは本当にごめんなさいって感じ…。
「残していいからね………」
なんてことを言った時、ふと気づいた。
…そう言えば、一緒に暮らし始めた時から実弥って私のご飯を残したことってないな。
私がまずいでしょ?って言って頷くことはあるけど、面と向かってまずいって言わないし。
……今にも吐きそうな顔して食べてるけど。