第41章 可哀想な人
指を三本立てる彼女に首を傾げていると、アリスちゃんは話を続けた。
「私が買い出しという名のツーリングに出かけている30分は不死川と二人きりにしてあげられるわ。」
「……え?」
「正直買うものないし。夕陽に向かって走ってくるわ。」
アリスちゃんはヘルメットをかぶってバイクをふかし、親指を立てて走り出していった。
(か……ッかっこいいいいいいいイィぃぃぃぃぃぃいぃーーーーー!!!)
このギャップまじたまんねえ。
アリスちゃんの格好良さに胸打たれ、お店の中に入った。
「……お前、どこで銃弾に打たれたんだよ」
「ハートを射抜かれたの!!!!!!」
胸に手を当てながら戻ると、とてつもなく心外なことを言われたのでちゃんと反論しておいた。
「……」
「……」
いや、久しぶりに会うと会話できない。会おうと思った時は話のネタを考えるからいいんだけど、今はノープランすぎて何も話せない。
待って何話したらいいの?もしかして30分無言?無言の世界?静寂?4分33秒???
「加賀美さん、やっぱ良い人だな」
「え、あ、うん」
…実弥はボソッと呟いて、それからまた黙ってしまった。
「……」
話のネタがない。
「私さ」
いや。
ネタならあった。
「今日、継国巌勝と会ったんだ。」
とっておきのネタを思いついて話しかけたが、その瞬間実弥の顔が曇った。………。
あ、やばい。地雷だったかも。
「………の、のり弁…のり弁ピクニックって知ってる!?」
「は?」
ああああああああ変な誤魔化し方しかできないいいいいいいい
「びっくりしただけで怒ってねェから素直に話せよ」
どうしようかと頭を抱えていたら、実弥が優しくそう言ってくれた。