第41章 可哀想な人
実弥に連絡を入れるものの、全く返信がなかった。アリスちゃんと二人で閉店後の店で大騒ぎするも後の祭り。
アリスちゃんが連絡を入れてから数時間後、肩で息をした実弥がものすごい形相で店の扉を開けた。
「!!」
「は〜い………」
顔面蒼白で私の名前を呼ぶ彼にヘラヘラと返事をした。
…Oh…言い訳が何も思い浮かばない。え、どうしよ。終わった。これ詰んだ。
「……は?」
「ごめん不死川!!!」
アリスちゃんは正直に両手を合わせ、実弥に勢いよく謝った。
「…私の勘違いでした……」
「……」
「ほら、ちゃんはこの通り無事です…」
私は元気さをアピールしようと腕をブンブン振り回して見せた。
はあ、はあと実弥の荒い呼吸音が虚しく店内に響いた。
「マジごめ「はあああああああああああああああ」」
アリスちゃんの謝罪をかき消すくらい長いため息を吐き出し、壁にもたれかかった。
「……良かった…」
実弥がそう言って弱々しくふにゃりと笑った。
いつも視線だけで人を殺せそうな目つきをしているくせに、急にそんな顔をするもんだからびっくりした。
「加賀美さん、連絡ありがとなァ」
「うん…」
実弥は力なく笑った。その様子にアリスちゃんも戸惑っていた。
「騒いで悪かった。じゃあ帰るわ。」
「……」
実弥の額に汗が浮かんでいるのが見えた。
「せっかく来たんだしくつろいだら?私これから買い出しだから、ちゃんと留守番してよ。」
「買い出しなら私も行くよ!」
「だめよ。あなた最近具合悪そうなんだもの。」
アリスちゃんはカバンに荷物を詰めて、さっさと用意を進めてしまった。
……?私、最近調子いいんだけど。知ってるはずなんだけどな。なんで嘘つくんだろう。
「そういえば、バイクの鍵どこにやったかしらね。」
「え?いつものところにあったよ?」
「嘘」
「ほんとだよ。ほらおいで。」
準備でパタパタと慌ただしくなった。店の入り口のそばで居心地悪そうにしている実弥をよそに私たちは店の裏にまわった。
「いつも通りここにあるじゃない。」
「30分」
「へ?」
アリスちゃんは私の言葉を無視したが、ちゃんと鍵は受け取った。