第41章 可哀想な人
アリスちゃんはカンカンに怒っていた。私たちは並んでその様子にビクビクと怯えていた。
「で?話は終わったの?」
「……ほとんど」
「そう」
彼女はにこりと微笑んだ。
「次またちゃんを長々と連れ出したら殺すぞクソ野郎」
拳を握りしめて……。
「…いや、そもそも昼食を食べようと声をかけてきたのはで」
「黙れ」
しゅっしゅっと音を立ててシャドーボクシングをする彼女はニコニコと笑っていた。
怖い。
「「申し訳ございませんでしたアリスさん」」
「分かればいいのよ」
二人揃って腰を直角に折って謝ると、彼女はまたにこーっと笑った。あ、これダメなやつ。
「ちゃんはもう帰った方がいいわ。潮風は体に毒だもの。」
「はい!帰らせてイタダキマス!!」
ここでアリスちゃんに逆らえば待っているのは死だ。
「じゃ、じゃあこれで」
「…童磨のことで何かあれば連絡しろ」
「え、連絡先知らない…」
「事務所にかければ私が電話を取る。」
巌勝はぶっきらぼうにそう言うと、彼はアリスちゃんに一礼してこの場から去っていった。
アリスちゃんはふっと笑顔を消して、じーっと私をにらんだ。
「何あいつ。どーいう関係?」
「?知り合いよ。」
「…ほんと?嫌なこととかされてない?されたよね?なんかあいつやばいやつよね??」
「ええ?そ、そんなこと何もされてないよぉ」
「あらやだどうしましょ」
急にアリスちゃんがワタワタしだしたので、どうしたのかと聞いた。
「悪い奴だと思って不死川に電話かけちゃった!!!!!」
「えええええええええええええええええええ!!!???」
「ゴッ…ゴメン〜〜〜ッ!!!!!!」
私は一瞬頭が真っ白になったが、自分の頬を引っ叩いて無理やり正気に戻した。
「でっ、でで電話したのいつ!!??」
「……1時間前」
「……ジーザス…」
特に信仰なんてないけれど、そんなことを呟いていた。ああ、なんだか眩暈がする。……1時間もあれば、今頃実弥は…。