第41章 可哀想な人
____血に塗れた和室。血でむせかえるようなにおいが広がる
__居心地がいいとは到底いえない場所だ
____自分の足元で力なく倒れる彼女は
___出会った時よりもずっと痩せ細っていた
___苦悶の表情、傷のできた顔は笑顔を浮かべない
__これが阿国なのか
__冷たい肉の塊が、阿国なのだろうか
___思わず抱き起した
_腕の細さに驚きつつ、そっと畳の上に寝かせてやった
___殺せば清々するはずだったのに、募るのは後悔ばかり
____思い浮かぶのは愛らしい笑顔
__出会った時の、曇りなき瞳
______殺せ、殺せ
___今すぐ心の臓を刺せ
_息の根を止めろ
__足ももいでやれ
__喰らえ
__喰らえ
___阿国を殺せ
_思い出を殺せ
___怨毒だらけの、あの日々を殺せ
__怨毒を消した、阿国の笑顔を殺せ
___ああ、冷たくなる冷たくなる
__生きろ
__いや、死ね
_それでも生きろ
_____私のいる場所で死んで、私のいない世界で生きろ
_____私のいない世界で
_____私の知らない世界で
_____私と出会わない世界で
_____矛盾だらけの私を許せ
_____お前を許せない私を許せ
__あぁ
__お前の言う神や巫女の力などというものがあるのなら
__今すぐ私の前に姿を見せろ
___そして
______そして
___________________いっそ私を殺せ