第41章 可哀想な人
「理解していたよ」
悔しくて泣きそうになっていると、巌勝からそんな言葉が返ってきた。驚いて涙も引っ込んでしまった。
「ずっと見守ってきたんだ。…阿国は強かに、美しく成長した。」
「巌勝……」
「そんな阿国を殺したんだ。あの子は最後まで私を疑うことはなかった。」
「でも、阿国は死ななかったわ。生きていたの。」
「私が殺したのはあの子の心だ。」
巌勝は一際大きな声でそう言った。
「私は今でも阿国を恨み、憎んでいる。」
「……」
「その血を引き継ぐ、お前のこともだ。」
……。
_____悲しい
___悲しい、悲しい
____苦しい
巌勝の心がそう叫んでいるようだった。伝わってくる感情が悲痛な思いを訴えていた。
阿国を許せない、許したい。許せない阿国を殺した自分を許せない、許されたい。そんな思いが溢れていた。
「阿国の笑顔はいつも私を救っていた。笑っているあの子を見ると幸せだと思えた。」
____殺したい、殺したい。
「その笑顔がいつの間にか憎くてたまらなくなってしまった。」
その瞬間、ブワッと強風のような、生ぬるい何かが一気にぬ私の頭の中に吹き込んできた。
夢の中で見たあの光景がフラッシュバックする。
……これは
阿国でもない、私のでもない、陽明くんのものでもない。
巌勝の記憶だ!