第41章 可哀想な人
きっとワガママは叶う。だってそれならみんなが被害に遭うことはない。
でも。
でも。本当にそれでいいの?
「…そこまで言うなら、童磨くんの居場所はわかってるんだよね」
「ああ」
……無意識に言葉が出た。
「だめだね。巌勝。」
「…」
「私、だめだ。もうこれ以外の答えが見つからないや…。」
彼はため息まじりに言葉を返した。
「お前の中で答えは出ているのではないか?」
「そうだね。散々みんなが自分を大切にしろとか、もっと深く考えろとか色々教えてくれたけど…。」
みんなと一緒にいたい。
たとえ不幸になってでも、みんなには私と一緒にいてほしい。
「私、口が裂けても『助けて』なんて言えない。」
「…」
こんなことを自分がバカらしい。
童磨くんを嫌う自分が憎らしい。
私は散々みんなから嫌われてきた。嫌がらせだって受けた。それと同じことを彼にしている。
結局は自分のことばかり。みんなのことなんて考えていない。
そんな私が嫌いだ。
好きになろうとしたら、いつもいつも過去がつきまとう。
殺したはずの父が足を引っ張り続ける。
「だから、行くよ。」
「……」
巌勝はすっと目を細める。…どことなく、穏やかな顔つきになった。
「行かせたくない」
「?」
「なぜだ。童磨のところに行ったとて良いことはない。なぜわかっていながら行こうとする。誰かに頼ればいいだけだ。お前一人で解決する必要などないのに、なぜだ。」
彼から迷いや戸惑いといった感情が伝わってくる。
「傷つくことがわかっていながら送り出すのはもうしたくない」
「…“もう”?」
それってまるで過去に経験があるみたいな言い方だ。その違和感に気づいた時、私は天啓のようにとあることを思い出した。
「もしかして、阿国のことを言っているの?」
気づいたらそんなことを口走っていた。デリカシーのない発言だったかも、と思った時には言葉は取り消巣ことができなかった。