第41章 可哀想な人
巌勝は目を見開いて驚いているようだった。白々しい、と一瞬思ったが本気で驚いていることがわかったので今度は私が驚いた。
「え?まさかマジで知らない?」
「ああ。童磨も転生していたのか?」
「え?」
「え?」
「「え?」」
頬が引き攣る。
「ちょ、ちょっと待ってよ、童磨くんのしたことは…まさか、彼が一人でやったって言いたいの?あんたたちも関与してたとかじゃなくて?」
「もともと童磨と私たちは反りが悪い。」
「うそ」
え。
待って。
「童磨くんの…なんていうか、いかれ具合は十分わかっている。けどあれだけのことを一人でやるなんてまず無理だろうし、てっきり鬼側に協力者がいるのかと…。」
「そんなことは知らないが。」
えーーーーーーーー??
は?じゃあ彼はあの事故を一人で…?いや無理だ。だって、1日の間に数人が被害に遭った。時間と場所を考えると童磨くん一人で事故を起こすのは物理的に無理だ。
それこそ、鬼でもない限りは。
「………童磨は信仰宗教の教祖だ」
「え…」
「…何があったかは全くわからんが、アイツに手を出せば組織そのもので潰しにかかる。裏の世界では有名な話だ。」
巌勝はスマホを操作し、画面を見せてきた。そこには宗教団体のホームページが。
そして、中央にデカデカと変に飾られた童磨くんがうつっていた。
「…何これ。」
「表向きは善良的な宗教団体だが、信者はほぼ洗脳状態に近い。教祖に忠実かつ盲目。」
「……」
「お前が先ほど話したことが本当ならば、お前は組織に目をつけられたのだろう。」
「わ、私が…?」
宗教…って。私、何か悪いことした?まあ確かに神様とか信じてないけどそんなことで狙われるとか意味わかんないし。
「…童磨だろう。童磨が命令をしたとすれば辻褄は、あう。」
「……あってほしくないものがあってしまったね…」
「全くだ。」
私は一気に食欲がなくなってしまった。手を止めた私から巌勝が弁当を取り上げた。
「次はお前の番だな。」
「…うん」
「私が殺した、お前の。」
巌勝は断りも入れずに食べかけの弁当に手をつけた。
文句もなかったので食べ進めるその様子をぼうっと見つめていた。