第41章 可哀想な人
アリスちゃんのお弁当は美味しいのに、食べる相手によっては味がしないんだということがわかった。
「ここら辺に住んでたんだ」
「仕事場からは離れているがな」
私たちは隣り合って海の岩場でお弁当を食べていた。見る人が見たら卒倒しそうだ。というか、私が倒れそう。
今すぐ逃げだしてえ。果てなき地平線に向かって全力スタートダッシュ決めてえ。
「元上弦の壱と元鬼殺隊の最強剣士が弁当を並べてピクニックとはな」
「やめて!言葉にしないで!!!」
そう。私の隣にいるのは元上弦の壱…巌勝だ。アリスちゃんと一緒にお店に入ってきた時は心臓が止まるかと思った。
私もアリスちゃんみたいに綺麗な飛び蹴りができたらよかったんだけどな。ははっ。
「だいたいこれピクニックじゃないし!最近はおしゃピクってのが流行ってんだよ!?のり弁ピクニック〜近所の砂浜で岩に腰掛けて〜とかはピクニックと呼ばないの!!!」
「売れない小説のタイトルみたいだ」
「ちなみに主人公はお前な」
中指を立てると行儀が悪いと戻された。
「私は休日ができればいつもあの弁当屋に行くのだが、あそこでお前と会ったのは初めてだな。」
「あああああああああーー!!何で私はこんなことばっかりなのよ!!たまには良いことあれよ!!私けっこう遠いところまで逃げてきたよね!?何で知り合いばっかに会うんですか!!誰か教えてください!!」
「単純にお前の顔が広いだけだ」
「ご丁寧にお答えいただきありがとうございますっ!!!!!」
ムキャーッ!!と心からの叫びを爆発させると、冷静なお返しをいただきました。はいどうもこんにちは。私25歳です。今海辺で叫びまくってます。
「だああああああああああああああああああ……」
「…何かあったのか?」
「とぼけないでよ!!どうせ知ってるんでしょ!?」
「何のことだ?」
私は一から今の事態を説明した。童磨くんのことも懇切丁寧に。