第1章 日の下の霞
ガラスが私を先導し、それについていく。
「なんか懐かしいね」
「そうか」
「…ごめんねガラス、私ひどい主人だったね」
「そんなことはない」
ガラスは振り返らずに言った。
「お前はいい奴だよ」
「……ありがとう」
ガラスは迷いもなく飛び続ける。…どこへ向かっているのだろうか?
「話せるうちに、話してしまいたい」
どこか冷め切った声でガラスは言った。
「俺はお前と一緒にいられて楽しかった。生意気ばかりで他の奴とは気が合わなくて、鎹烏は向いていないと言われていた。でもお前は俺が何を言っても嫌がらなかっただろう。だから嬉しかったんだ。」
「私は賑やかで良かったよ。話し相手がいてくれたから。」
「そうか。」
「私、何があってもあなたのことが好きだったよ。」
「俺もだ。俺も、お前のことが好きだった。」
突如、ガラスの動きが鈍くなった。
ぼたぼたと小さな体から何かが落ちる。
血だ。
「ガラス」
「……なあ、俺のせいで、お前、死んぢまったよな」
「違う、鬼になったから、死ななかったの」
「……そうか」
とうとう飛ぶことができなくなり、落ちてきたので受け止めた。
私と同じく血塗れだった。
「……。ガラス。」
「………。」
話さなくなった烏を、ぎゅっと抱きしめた。
私はポロポロ泣いたが、真っ赤な血涙しか出てこなかった。
再び地面に膝をつき、しばらくそうしていた。