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キメツ学園ー輪廻編【鬼滅の刃】

第1章 日の下の霞


気づけばあたりには真っ赤な彼岸花が咲いていた。


私は顔をあげた。目から何かがこぼれ落ちる。視界が赤く染まる。血だ。血が出ている。


真っ赤な世界の中で、少し遠くに懐かしい背中が見えた。

淡いさくら色の、波紋柄の羽織。

あぁ、あれは。


「桜くん」


私は近づこうとしたが、どれだけ頑張っても進めなかった。鉛のように体が重かった。

私に気づいたのか振り返った。その姿を見て私は目を見開いた。彼は血まみれだった。

死んだときと同じく、腹に穴があいていて向こう側が見えた。


血まみれの彼は信じられないほど安らかな微笑みを浮かべていた。

手には何かを持っていた。

闇の黒と花の赤しかないこの世界で、それは輝いて見えた。


真っ青な、彼岸花だった。


青い、彼岸花。


「……」


私は呆然とそれを見ていた。桜くんはそれを持って微笑んでいた。


「……そっか」


私は、彼の一番の秘密を知った。


「見つけてたの、青い彼岸花」


桜くんが頷く。
薬について話してくれたとき、そんなものは見つからなかったと言っていたのに。

じゃあ。

安城殿が疑っていた、あの、薬は。


薬を飲んだ私は。


「ねえ、それで君の秘密はおしまい?もう眠れるの?」


私が聞くと、桜くんは頷いた。

その時、私はあることに気づいた。彼の肩に何かがいる。それは、烏…だろうか?


「惨めな姿だな」


烏が口を動かす。

桜くんが私に手を伸ばす。その途端、烏は私の元へ飛んできた。


「立て。もう時間がないから、早く行くぞ。」

「?……ガラス?」

「俺以外の誰に見えてるんだ、アホか。」


そう言われた途端、体が軽くなった。血を足下に垂らしながらも私はすんなりと立ち上がることができた。


「…桜くん」

「あいつは来ない。」

「でも。」


振り返ると、ブワッと風が吹いた。

桜の花びらが舞う。
遠くに桜くんが見えた。大きく手を振っている。


『いってらっしゃい。気を付けて。あなたに幸せがありますように。』


声が聞こえた気がした。


『もう戻ってこないでね。』


桜の木もないのに花びらは舞い続け、それにさらわれるように彼は消えてしまった。

桃色の花びらに包まれる中、青い彼岸花は不思議な光を放っていた。
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