第40章 好き、嫌い
「ちゃん、前世の記憶がある人でしょ」
どんな話かと思えば、アリスちゃんは私の心に重い一撃を入れてきた。
てかビックリしすぎてあめが喉につまるかと思った。
「え!?ゼンセ!?ナニソレシラナイコトバ!!!」
「あははッ!!誤魔化さなくていいのよ。……私も記憶持ちだから。」
アリスちゃんはニヤニヤ笑っていた。
…!!!え、嘘!?
「あ、アリスちゃん!?何を言ってるの!?」
「大正時代、鬼殺隊、んー…お館様」
アリスちゃんは令和に生きる人なら絶対知らない言葉を並べた。
「どう?信じる気になったかしら」
「……はい…信じましゅ………!!!」
「けっこう。」
彼女はクスクスと笑った。
え?なんで?なんで??え???なんで??????
ま、まさか前世でも会ったことあるとか!?鬼殺隊だったってこと!?ふぁ!?待って!?ダメです全然理解が追い付きませんッ!!!
「まあ私は鬼殺隊じゃないけどね。」
「…へー……???」
「そうよ。私と会った覚えないでしょ?私も前世でちゃん見てないもの。」
「はえ?んじゃ、どうして鬼殺隊を…??」
あめを口で転がしながら聞くと、アリスちゃんの顔に影が落ちた気がした。
「私さ、結婚…してたんだよね」
「ん??」
「当時、日本に住んでる私みたいなハーフは珍しかったと思うけど…。夫は快く受け入れてくれたわ。」
……。
そーなんだ。
…ずいぶん大人の話だなぁ。だめだもう頭がまわってない。
「でも夫はおかしかったのよ。」
「おかしい?」
「夜になると、決まって日が昇るまで家にいなかったの。」
「…それって」
アリスちゃんはふう、とため息をついた。
「夫は鬼殺隊…鬼狩りだったのよ。」
…そっか。
それで鬼殺隊の存在を知っていたんだ。