第40章 好き、嫌い
息が苦しい。もちろん痛い。
彼はすぐに笑顔を消した。真顔になっても不気味で怖い。もう、全部全部気持ち悪い。
「…ッ、あ…が…!!」
「悲しいなあ」
童磨くんはポロポロと泣いた。皮肉にも綺麗な涙だな、と思ってしまった。けれど彼の感情は悲しんでいない。
「俺はもう鬼じゃないから君のことは食えないし、悲しすぎるよ。殺すしかできない。」
ぽたぽたと頬に雫が落ちてくる。
酸素が肺に入ってこない。どんどん首を絞める力が強くなる。
けれどすぐに殺すつもりはないのか、意識が飛ばないギリギリのところで寸止めされている。
「君ってば本当に強かったんだよ。俺のことだってちゃあんと殺せるくらい強かった。黒死牟殿だって相討ちで斬れたんじゃないかな。でも君はあの夜生き残った。鬼になりたかったんだよねえ?あは、俺知ってたんだよ。君が鬼になったの!」
「…、ッ………!」
「自分を犠牲にして得たものはどうだった?君のせいで仲間は死んで、君が生き残りたいからと無駄な欲を出したせいで黒死牟殿は斬れなかった。何より、君が鬼殺隊にいた11年間追い続けていた僕の存在に微塵も気付かなかった!!」
痛い。苦しい。
意識が、もう。
「ああ、嫌いだよその目…ねえ、怒ってよ。絶望してよ。どうしてそんなにキラキラした目をしてるの?ずるいよ。氷雨春風と黒死牟殿だけが本当に綺麗な君を見ただなんて。」
ああ、でも
わたしでさいごなら
「もう君はいらない」
『お前はいらない』
誰だったか、言われた記憶がある。
…鬼だった?あれぇ?側に春風さんが見える。なんだろう?これ、前世の記憶かなあ??
?春風さんがなんか叫んでる。必死に自分に覆い被さる何かに抵抗していた。
氷雨くんの刀がきらりと光っていた。
その刃に確かにうつっていた。
怒りに顔を歪めて、力の限り叫び声をあげて、まるで獣みたいに暴れている________
自分の姿が。