第40章 好き、嫌い
「だから君の心を削った。」
童麿くんはゾッとするほど冷たい視線を私に向けた。まるで私たちの周りだけが真冬みたいだった。
「丸い目の男の子と妄言の男の子はね、君と仲良しだったから殺したんだよ。あの二人はちゃんと君のところまで帰したでしょ?最後は君と一緒にいられたはずだよ。
最後の言葉を君に残すところまで俺は再現したんだよ?どう?すごいんでしょ?」
何を笑っているんだ。何も面白くない。笑っているくせに感情がない。気持ち悪い。不気味だ。理解できない。
私は今、彼を怖いとさえ思ってしまう。
ああ、そうか。やっぱり全部こいつがやったのか。
順番と狙われた人からして私と何か関係しているのはわかっていた。優鈴と桜くんの妙な共通点からして、二人を殺した上弦の弍だということも。
けれども私はこいつと前世で会ったこともない。
「でもすごいね。すぐにみんな対応してきた。結局中途半端で終わっちゃった。」
「………」
「まあ、ちゃんに会えたからいいかな。」
童麿くんとにこりと笑った。
「どう?絶望した?」
彼は私の顔を両手で包み込み、無理矢理上を向かせた。キラキラと輝く彼の瞳と目が合った。
なんで。
なんでこんなに何もない。空っぽ。そのくせしてこんなことをする。意味がわからない。理解できない。気持ち悪い。
私は憎悪しか感じなかった。
ただ童麿くんを睨みつけていた。
「ああ、またそんな目をする。」
彼の声がワントーン低くなった。
「なんでかなあ。どうして君はあの姿を俺に見せてくれないの?あんなに君を追い詰めたのに、ずっと前を向いて諦めることをしなかった。
挙げ句の果てに…」
頬に添えられた手がどんどん下がっていく。
「あろうことか黒死牟殿に横取りされた」
「ッ!!!!!」
急に首元に手がおりてきたと思えば、そのまま首を絞められた。