第39章 誰かが見ている
「粂野さん」
___隊士、粂野匡近
___死亡確認
_隊士、不死川実弥
__下弦の壱を斬ったことを確認
____残党はおらず
___状況確認は以上とする
「次は粂野さんなんじゃない?」
実弥から体を離す。彼は青い顔をしていた。
「…ねえ、電話してみて」
「……それでなんもなかったら、お前は納得するんだな?」
念押しのようにそう言われて、私はうなずいた。実弥は自分の部屋に行って粂野さんに電話をかけた。
私は不安に押しつぶされそうな思いで実弥を待っていた。しばらくして彼はリビングに戻ってきたが、明らかに様子がおかしかった。
「匡近も事故にあったらしい」
「!」
「…大したことはねェ。ちょっとバイクに当たっただけで、すぐに退院できるってさ。」
これで確実となった。
「間隔が短くなってる。」
春風さんと天晴先輩の間には時間が空いていた。けれど、今日は1日で二人も。
「………カナエ…!」
私は慌てて電話をかけたが、繋がらなかった。
テレビをつけたがニュースでは何も報道されていなかった。……まだ何も起きていない?
いや、予感がする。
「…!私、出かけてくる!!」
足元で寝るおはぎをよそに玄関に向かった。
「!っ、おい!ちょっと待て!落ち着けって!!」
「離せ!!私は落ち着いてる!!」
実弥が後ろからはがいじめにしてくる。早くいかなきゃいけないのに!!
「どこに行こうってんだよ!?」
「神社!陽明くんに会ってくる、あの子ならわかるはずだから…っ!!」
「ふざけんなッ!!!!!」
実弥は暴れる私を一喝した。その声に動きを止める。
「コレはもうお前一人の問題じゃねェんだよッ!!」
「むぎゅ」
私の頬を乱暴に両手で包んできた。
痛い。昨日優鈴に散々叩かれたのに。
「自分一人でどうにかなると思ってんじゃねェ!!!」
実弥は私の目を見てそう言った。
「……もっと俺たちを信じろ」
すると、玄関の扉が開いた。
「ちょっと、あなたたち何揉めてるの?」
アリスちゃん…だけではなかった。
「ご近所迷惑になるわ。お客様も来たのに。」
彼女はくるりと振り向き、その二人を中に入れた。
玄関の扉が閉まる頃にはだんだんと状況を理解しつつあった。