第39章 誰かが見ている
「もしもし、優鈴?」
私は自分の声があまりにも気だるげだったので驚いた。…疲れてるんだなあ。
『ごめん』
「…優鈴?」
挨拶もそこそこにそう言い出したので、私は面食らってしまった。
「…どうしたの?あなた、走ってるの…?音が聞き取りづらい……。」
『ごめん、!!お前、お前じゃなかった!!』
「……優鈴?」
『ごめん、許してくれ!叩いしまって、責めてしまって、本当にごめん!!』
昨日のことを言っているのだとわかった。
怒ってないよ。大丈夫。許すも許さないもないよ。
そう言おうとしたが、優鈴は早口に続けた。
『、ハルナちゃんが無事なら伝えて欲しい。僕は君と過ごせて楽しかった、僕を好きでいてくれてありがとう…傷つけてごめんねって。』
「…何を言ってるの?自分で伝えたらいいじゃない……」
そこで、私は気づいた。
氷雨くん、安城殿、桜くん。
その次は。
「優鈴」
いやな予感がした。
ゴウンゴウンと変な音が電話の向こう側から聞こえた。…これは…工事現場の音?
『』
急に優鈴の声が穏やかになり、私は私は固唾を飲んだ。
『一連の事件は仕組まれていた。たった今、その犯人がわかった。いや……思い出した。次はアイツの番だ。』
優鈴は何かを悟ったようだった。
『犯人は______________』
その声は私に届くことはなかった。
次の瞬間、鼓膜が破れそうなほどの大音量で騒音が響いた。
「………優鈴?」
名前を呼んだ。
返事はなかった。
ずっと通話中だったが、優鈴の声が聞こえてくることはない。代わりに、コツコツコツ…と革靴がアスファルトを叩く音が聞こえた。
「誰」
震える声で電話の向こうに言った。
「誰だ、お前」
誰かがいる。
電話の向こうに、何者かが。
しかし、返事はないままプツッと音がしたと思えば、通話は切られていた。
私は呆然として布団の中で震えていた。