第39章 誰かが見ている
病院にはご両親だけが残り、私たち三人は病院から出た。アリスちゃんも一緒に私たちのマンションの部屋に戻った。
「ごめんね、アリスちゃん…せっかくのお休みだったのに。」
「構わないわ。不謹慎かもしれないけど、私いてよかったって思ってるの。ちゃんのそばにいられるしね。」
アリスちゃんは微笑んでそう言ってくれた。この子が友達で良かったと心の底から思った。
「私はあなたが心配よ。今日はもうゆっくりしなさいね。」
そう言ってくれたが、私は落ち着かなかった。
そのせいか、つわりがひどくなった。吐くだけ吐いて水さえ喉を通らない私を見て二人とも心配していた。
アリスちゃんが外に布団を買ってきてくれて、今日はアリスちゃんと私の部屋で眠った。
しょっちゅう起きる私にうんざりすることもなく、彼女は根気強く相手をしてくれた。
「大丈夫よ」
アリスちゃんは、子守唄でも歌うような穏やかな声で私をなだめてくれた。
「誰も死んでいないわ。あなたは強い子。ね?」
同い年の女の子とは思えなかった。
まるで、ずっと年上のお姉さんと話しているみたいだった。
私は空が明るくなるまで眠れず、眠れたと思ってもほんの2時間ほどしか寝ることができなかった。
しかも、体が重くて布団から出られなかった。昨日泣き過ぎだのか目が腫れぼったい。昨日優鈴が叩いた頬も真っ赤に腫れていたのでアリスちゃんが文句を言いながら湿布を貼ってくれた。
アリスちゃんは私にゆっくりするようにと言い、もうとっくに起きて活動を始めている実弥の元へ向かっていた。
二人の話し声は聞こえてきたが、何を話しているのかまではわからなかった。
そうして耳をすましているうちにうとうととしていると、枕元に置いていたスマホが鳴った。
…?こんな朝から誰だろう。
そう思って画面を覗き込むと、そこには木谷優鈴の名前があり、私はためらうことなく電話に出た。