第4章 夢想
「お前はすぐに泣くなあ。」
実弥はそう言って涙を拭いてくれた。
「泣きたくないのに、出るんだもん。」
私はタオルで目元を抑えた。
実弥は優しい。泣いてる私を微笑んで見守ってくれる。
「目が覚めたときは体が動かなかったから、今がびっくりだよ…」
「回復が早すぎて医者も意味が分からないって言ってたぞ。」
「……昔に引き摺り込まれただけだから?」
あれは夢なのか、何だったのか。
霞守陽明という会ったこともない人の話を聞かされて、無理やりにも自分で信じようと思っていたのにやはり腑に落ちないことがある。
「さあな。俺には経験がないから分からん。」
「でも、舞い?を奉納してくれたから私帰ってこられたんだよね。」
「ああ、そうらしい。」
「……」
「そんな顔すんな」
実弥が嫌そうに私を睨みつけた。
「気にな「らない」」
私の発言に言葉を被せてくる。
「な「らない」」
……。
「ああー!!ひどいひどい!!私の純粋な気持ちを弄んで!!遊びだと思ってるんでしょ!!サイテイ!!」
「誤解を生むような言い方すんじゃねえよ!!!」
「気になります!!私はとっても気になりますよ!!」
迫る私に実弥は頭を抱えて距離を置いた。
「え、実弥が離れちゃうんだけど。」
「お前が無茶言うからだ。」
「ええ…。」
実弥の反応に納得できず、私は頬を膨らませた。
「だってさあ、刀傷も何でか痣になって消えないし。いきなりのことすぎて受け止めるの難しいよぉ…。」
「…痣?」
「……あれ?聞いてない?」
私は右手の病院服をまくった。
そこには腕をぐるっと一周囲ってしまうように痣ができていた。
「これ足にもあるの。別に傷とか気にしないけど、何でこれだけ残って……」
青みを帯びた不思議な色。しかも雲みたいにふわふわした輪郭。
「……」
「何?」
「お前、今何歳だ」
「え、25だよ。タメじゃん私たち」
実弥の顔が青ざめていく。
その様子を見て私は首を傾げた。