第38章 誰も知らないはずなのに
春風さんは、階段で転んだ。自分で転んで、両足を骨折?鉄の手すりに打ち付けてから地面に直撃?片足は元通りになるかわからない?なんで足だけ重症?
天晴先輩は全身にガラスが刺さって出血多量。積まれた機器が崩れてガラスが割れた?ガラスが割れるほどのものが積まれてるってこと?割れたガラスがどうして全身に刺さった?
桜くんたちはどうして轢かれた?二人は確かに青信号で動き出した。信号無視はしてない。トラックのスピードは?赤信号なのにブレーキは踏んでいなかった?信号無視?あんなに派手に轢かれたのに、どうして桜くんは腹部だけに重傷を負った?
偶然か?桜くんのはどう見ても事故だが、あれは偶然か?犯人は逃げた。誰がやったかわからない。
他の二人は?本当にこれが、偶然の事故か?
春風さん、天晴先輩、桜くん。
じゃあ、誰かが、これらの事故を引き起こしたとすれば。
そうだ。春風さんの時、足を負傷した彼を見て前世を思い出した。
氷雨くんは、足を鬼に食われて歩けなくなって鬼殺隊を引退した。
安城殿は、全身を切り刻まれて出血がひどくて死んだ。
桜くんは、腹に穴を開けられて死んだ。
春風さんは、足を怪我して歩けるかわからない。
天晴先輩は、全身にガラスが刺さって出血多量。
桜くんは、トラックに轢かれて腹部に重傷を負った。
氷雨くん。春風さん。
安城殿。天晴先輩。
桜くん。桜くん。
誰かが、引き起こしたことだとすれば。
「どうしてこの順番を知っている………?」
私はそう呟いて顔を上げた。
世界がさっきまでと違う色をしているような気がした。
私はゆっくりと立ち上がった。
「…は?おい、?」
ゆっくりと歩く。
そうだ。
順番。
なんで気づかなかった?しかも、怪我したところは死因や引退理由と一致する。
「順番」
誰も知らない。
誰も知らない、順番。
その時を生きていた者しか知らない順番。
「順番がどうしたんだよ…?」
何も知らない実弥が私に声をかける。
私はそれに気づいた時、ぐにゃりと視界が眩んだ。
その後のことはよく覚えていない。
実弥が私の名前を呼んでいた気がするが、答えることはできなかった。