第38章 誰も知らないはずなのに
警察の相手は実弥がしてくれたらしい。事故当時に居合わせたのは私たちだけだから。
けれど、私たちに言えることなどあるはずもなく、すぐに警察への対応終わった。
「トラックには誰もいなかった」
実弥はギチギチと音が鳴るほど手を握りしめていた。
「…犯人は不明だ」
私はそれを聞いても怒りも湧かなかった。
ただ二人のことが心配で。
どうして。
どうしてこんなに立て続けに嫌なことが起きるのだろう。
どうして。
どうして、どうして。
目の前にいたのに。
私は何も……。
「ちゃん」
私は名前を呼ばれてハッとして顔を上げた。
「不死川と休んでいらっしゃい。それに、服を着替えた方がいいわ。替えの服は持って来ているでしょう?何かあれば私がすぐに呼ぶわ。」
「……。」
「そんな顔していたら、あなた死神見たいよ。」
アリスちゃんはいっそう強く手を握ってくれた。私はフラフラと立ち上がり、彼女の手を振り払って実弥と一緒にその場を離れた。
「……着替えてくる…。」
病院の人に言って、部屋を借りて血まみれの服を着替えた。汚れた服は処分してもらうことにした。
「外、行くか。」
私の着替えを待っていた実弥と一緒に病院の庭に出て外のベンチに座り、風に当たることにした。
「………」
私は頭を抱えた。
ダメ。頭の中からあの光景が離れない。
桜くんの、最後の悲痛な叫び。
『おもいだせ』
あの、声。
『じゅんばんだ』
……………順番?
順番って、なんの。
私は頭の中で、カチリと何かのピースがハマるような音が鳴った。
最初は、春風さん。
次は、天晴先輩。
その次は、桜くんとハルナちゃん。
春風さんは、足。
天晴先輩は、全身からの出血多量。
桜くんは、お腹をひどく損傷した。
順番。
春風さん、天晴先輩、桜くん。