第38章 誰も知らないはずなのに
と言うわけで、三人で仲良く桜くんを迎えに行くことにした。
先輩の具合が悪いので見舞いをするにはしばらく時間を空けようと結論づけ、桜くんも一緒に近くのカフェで時間を潰すことになった。
「なんか、桜がお前に話したいことがあるって言ってたけど」
「え?なんだろう…。」
連絡をとってくれていた実弥がそんなことを言うので、少しどきりとした。ひとまずは病院の近くで合流しようと私たちは外に出た。
「初対面なのに私も一緒でいいのかしら…」
「桜くんはそんなこと気にしないよ、アリスちゃん。それに今日は妹のハルナちゃんも一緒なんだって。きっと仲良しになれるよ。」
そんなことを話しながら横断歩道についた。
「あ、霧雨さーん!」
遠くから声が聞こえた。
今から渡ろうとしていた横断歩道の向こう側に大きく手を振るハルナちゃんと、いつも通り仏頂面の桜くんがいた。
「あ、ほらあの子たちだよ。男の子が桜ハカナくんで、女の子が桜ハルナちゃん。」
「か、かわいい子ね。あといい人そう…。」
ほっとしたアリスちゃんはにこりと笑った。
「…ここ、車通りが多いな。」
実弥がぽつりと呟いた。確かに、目の前ではビュンビュン車が通っている。
「ここら辺は病院の他にショッピングモールや運送会社なんかも集まってるみたいよ。」
「だからやたらとトラックが多いのか。」
さりげなくアリスちゃんとも自然に会話をしていて、それが嬉しかった。
横断歩道の信号が青になると、桜くんたちは歩き出した。特にハルナちゃんは大はしゃぎでタタタッとこちら側へ走ってきた。
その時、車の通りを気にしていた実弥が声を上げた。