第38章 誰も知らないはずなのに
部屋に戻ってからも心が落ちつない。久しぶりのおはぎとの再会も素直に喜ぶことができなかった。
さっさと寝てしまいたかったけれど、私はもうここには戻ってこないつもりだったし布団もベッドもない。お風呂にも入ってもう寝る気しかなかったのに。
まあ着替えとか何とかは持って帰って来てるけどさ。
え、寝る場所なくね。
「ソファーで寝る」
「は?」
実弥が青筋を立てた。
「はあ〜おはぎくん、いっちょに寝まちょーね」
「待て待て待て」
おはぎを抱っこした途端、実弥が血相を変えた。
「アホか、妊婦がこんなとこでねんな。俺の布団で寝ろ。」
「じゃあ実弥はどこで寝るの?」
「…お前と寝る」
流石にこの小さなソファーで寝るとは言わなかった。
「…でも、私夜中にしょっちゅう起きるから一緒じゃない方がいいよ。私、今からでもホテル取るし…。」
「それでもいいから。」
今日は連休の初日。いつも忙しく働いている彼からしたら貴重な休みなのに…。
しかし、実弥は意地でも聞かなかった。
渋々了承したが、横になった途端に不快な吐き気に襲われた。十分もしないうちに私はのそのそと起き上がり、トイレに向かった。
つわりが辛い人とそうでない人がいるというが、私は絶対前者。夜中は特にひどい。
しょっちゅう部屋を行き来するうちに当然実弥は起きてしまう。
「…大丈夫か?」
「……いいから、寝てて…」
げっそりして戻ってくる私に心配そうに眉を下げた。
「…ごめんな、お前…一人で辛かっただろ」
私はぎゅっと彼に抱きついた。
「いいえ?実弥と一緒にいる方がキツかったし」
「………ごめん」
「ふふ、でもちゃんと言葉にしてくれたから嬉しかったよ。まさか突撃してくるとは思わなかったけど。」
二人でそんなことを話していると、だんだんムカムカも落ち着いてきて、私は眠れることができた。
…なんだかんだ、私にとっては彼のそばが一番居心地がいいらしい。