第37章 動き出した黒幕
二人で今後のことは少しだけ話した。
まず、早急にお互いの家族への挨拶。もう私たちは結婚に関してぐずぐずしている暇はなかった。
そして、出産が終わるまではアリスちゃんのところで私はお世話になること。実弥は教師の仕事が忙しい。それに、出産の準備はこっちで進めていたので通院のことも考えるとその方が都合が良かったのだ。
「はあ〜。めっちゃ不安なんだけど。」
アリスちゃんはむすっとしていた。私が実弥と暮らしていたあの家に戻るから。
「ねえー、不死川に毒されないでよ?ちょっとでもクソだな〜って思ったらすぐ私に電話して?良い?」
「わ、わかった」
「言いたい放題かよ」
「あら結婚より子作りを優先した奴がなんか言ってるわ」
実弥はそう言われて黙り込んだ。アリスちゃんはププっと怪しく笑った。
「良い?不死川。ちゃんは出産が終わるまではこっちで住むんだからね。ちゃんと戻ってくるのよ。」
「…わーってるよ」
「あーら返事が聞こえない」
「わかりました」
アリスちゃんとは始終こんな感じだったけど。
出発前にアリスちゃんは私をぎゅっと抱きしめてくれた。そして、荷物を軽くまとめてすぐに実家へ向かった。
両家へは連絡が済んでいて、どちらも今から行っても問題ないとのこと。
私が妊娠していることはもうしらせた。
本当は直接言うべきことだけど、先に言って仕舞えば逃げ道がなくなるからと実弥本人が言っていた。
返信はきたが、両家ともこのことにはノータッチ。そのことに冷や汗をかきながらも、私たちは不死川家へと向かっていた。
おばさんが、『こっちに先に来なさい』と言っていたから。
実弥は車に積んでいた仕事用のスーツを着て、真面目モード全開だった。
「ねえ」
「あ?」
「一生のお願いだから今だけでもボタン閉めてくれない」
「無理、ごめん」
うん。
前言撤回。いつも通りです。