第36章 許せない
え?玄弥くん?なんで急に玄弥くん?それで、玄弥くんが鬼殺隊?へえ?????????
何一つとして情報が完結しない。全く。
「ついこの前、あいつ全部思い出しやがった。…俺が想像してた一番嫌な状況になっちまった。」
「……」
「俺のことも思い出したってよ。」
……。
ああ、そう。
なんで今こんな話をしているのかさっぱりだが、まあ…?実弥は弟思いだし、前世でもいいお兄ちゃんだったのでは?
「俺なァ、母ちゃん殺してんだ」
「……え」
「…鬼になっちまって、弟と妹どんどん殺していくから…仕方なしに俺がヤった。」
頭に思い浮かぶのは、優しさの塊のような実弥のお母さん。まさか、そんなことがあっただなんて。
「その時、生き残ったのは玄弥だけだった。…母ちゃんを殺した俺に、人殺しって言った。」
「……」
「その日から、俺の世界には色が消えた。」
知らなかった。
聞いたこともなかった。
………これは。
きっと、実弥の一番の秘密。
「でもそんなことどうでもよかったんだ。俺は…みんなができなかったみたいに、玄弥が所帯を持って幸せに暮らしていてくれたら…。そこには、俺が鬼なんて来させねえってそう思ってた。」
………。
「でも、アイツは馬鹿だから鬼殺隊に入った。俺に人殺しって言ったことを後悔していた。俺を追いかけてきたんだ。俺はどうにかして玄弥に鬼殺隊をやめさせようと…とことん玄弥を突き放した。
お前なんか弟じゃねえって言って、目を潰そうとしたこともある。ぶん殴って投げ飛ばしたりもした。」
実弥は淡々と話を進めた。
…なんだか、私に似たところを感じた。私も無一郎くんに鬼殺隊をやめさせようとして、無理難題をふっかけた。…あの子は、天性の才能と弛まぬ努力で全部クリアしていったけれど。
「でもなァ……やめることはなくて…アイツは俺より先に死んだ。」
まるで自分のことを言われているような気がして、心臓を射抜かれた気分だった。