第36章 許せない
実弥と会う日はすぐにきた。
鏡の前で今日の服とメイクを確認する。
「いやデートかッ!!!!!!」
勝手に自分でそう突っ込み、慌ててメイク落としでスッピンに戻ってワンピースからジャージに着替えた。
髪の毛もわざと崩して、リュックに荷物を詰め込んでから外に出た。
「いいこと、ちゃん。」
頼んでもいないのにアリスちゃんがわざわざ来てくれた。
「鳩尾は殴って急所は蹴り上げるのよ。」
「…それ、暴漢の対処法では…」
「今日は私が送り迎えをするわ。」
アリスちゃんはそういうと同時にヘルメットを取り出した。愛らしい見た目に似合わぬそれにギョッとしていると、彼女は私の分を投げてよこした。
ゴツゴツしたそれをじっと見つめているうちに、アリスちゃんは店の裏側から大きなバイクを運んできた。
ひらりとそれにまたがり、エンジンをふかす。
「乗って」
後部座席を指してそう言ってくるので、なんだか心臓を掴まれた気分だった。
バイクは勢いよく発進し、実弥との待ち合わせ場所へと向かっていく。
「え〜…アリス…ちゃん、これって」
「私の趣味」
彼女は赤信号で停まってからくるりと振り向いた。
「イケてるっしょ?」
にかっと笑う姿にまた心臓を掴まれた。
…いっ…イケメンすぎるうううううううううう!!!!!!!!
「車みたいに閉鎖された場所よりは気分がいいでしょ。まあ〜っでもあなたを乗せるのはあまりしないほうがいいかしら。妊婦さん乗せるのドキドキするわあ。」
「っううん、また乗せてよ!」
「いいけど、長距離は負担になるからだめよ〜。」
私とアリスちゃんははしゃぎながらツーリングを楽しんだ。