第35章 頭痛の種
まだプリプリしているアリスちゃんをなだめて、実弥を連れて外に出た。店を出る直前に彼女には1時間だけ、と念を押されてしまった。
すぐそばにある公園のベンチに座り、自販機で私は水を、実弥はコーヒーを買った。この公園からも海が見えた。今の時間は誰もいなくてしんと静まり返っていた。
吐き気がひどくてずっとハンカチで口元をおさえていると、実弥が心配そうに聞いてきた。
「具合悪いのか?」
「……そんなことナイ」
「……いや、そんなことあるだろ。」
実弥は気まずそうに目を逸らした。
「連れ出して悪い。」
「いいよ…。」
「…店にいたあの子、怒ってたけど…大丈夫か?」
「……大丈夫じゃないと思うけど、私が何とかするから気にしないで。」
もう何年もずっと一緒にいて何の気兼ねもなく話せていたのに、今は会話のテンポがぎこちなかった。
「…それで、話って何?」
実弥が言いにくそうにしていたので、私から話をふった。
「俺がここまで来たのは…どこから話せばいいかわからんが。」
実弥は少し間をあけて続けた。
「木谷さんが、SNSでお前の絵を見つけたって教えてくれたんだ。高校時代の同級生が絵の写真を載せてるって……。」
「………」
あーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
悲鳴をおさえられたのはハンカチで口元をおさえていたおかげだろうか。
いや、まって。そうだ忘れてた。
優鈴と私って同じ芸術系の高校に通ってたんだった!!!そりゃ当然、アリスちゃんも同じ学校なわけで。私と彼女が美術科で、優鈴が書道科。
待てよ。
それ、つまりは。
は???
あの二人SNSで繋がってたーーーーー!?!?!?
意外なところで意外な人達の接点が判明した。この時点で私は白目を向いていたと思う。
しかし、実弥の話はまだまだ続くみたいだった。