第4章 夢想
優鈴はそれを見送り、側の椅子に腰かけた。何だか疲れが見える。
「感謝してよ。僕が一週間神社で舞い続けたんだから。」
「!そうだったの…ごめんなさい…」
「……ま、起きたならいいや。」
優鈴は深いため息をついた。
「実は今すごく困ってるんだ。」
「さてはハルナちゃん?」
「あ、わかっちゃう感じか……そうだよ。」
「何で?ハルナちゃん良い子じゃない。」
優鈴はふてくされたように頬を膨らまして足を組んだ。
「いいから他の事話そうよ。」
「…うん。」
照れてる。それが伝わってきて、何だか微笑ましかった。
「…てゆーか本当にもう元気なの?」
「うん!元気いっぱい!皆のお陰。」
優鈴はふにゃっと微笑んだ。
「……良かったねぇ、本当にねぇ」
………。
「……ねえ優鈴。」
「何。」
「あなた、泣いたことないよね。」
私が聞くと、優鈴はキョトンとした。
「悲しい時に笑うの、やめていいと思う。」
ピタッとその頬に手を添える。
優鈴はいつも朗らか。優しくて、頼もしくて、だから私は大好き。
でも今はっきりと感じたの。悲しみのその感情を。
そんなわけなかったんだ。人間だから、いつもずっと同じってことはないよね。
「優鈴、あなたってば本当に優しいから、私が大好きなままの優鈴でいてくれるのね。ありがとう。ありがとう、でもね、私、どんなあなたでも嫌いじゃないから。」
そう言うと、優鈴はきゅっと唇を引きのばした。
「泣かないようにしてるんだ」
「……そうなの」
「前世からそうしてた。誰が死んでも泣かないようにしてた。君のためじゃない。」
「そう。」
「あぁ、でも…ちょっと、君のためでもあったかな。」
優鈴はそう言った。
ふにゃっと笑う。
「…お帰り…お帰りなさい、本当に」
「………ただいま」
感じ取れる悲しみがあまりにも深く大きいものだったので思わず私が泣いてしまった。
優鈴は困ったように笑い、それをぬぐってくれた。