第34章 静かな暮らし
「私あの絵を気に入ってしまったの。お店のあそこら辺に飾りたいのだけど。」
アリスちゃんはお店の入り口付近を指さした。
「あそこに飾れば、お店の外からも見えるわ。きっとあそこが一番良いと思うの。大切にするから、売ってくれない?」
「…そんなふうに言ってくれるだけで私、とっても嬉しい……!アリスちゃんにはたくさんお世話になっているから、お金なんていらないよ。」
「いいえ!絵を描くのって大変だもの。私だってわかるわ、それにあなたはそれを仕事にしているの。タダなんて失礼なことはできっこない。」
アリスちゃんはキッパリとそう言った。…仮にも絵を描いて職業にしているので、それ以上断るのはできないと思ってその申し出を受け入れた。
「ありがとう、アリスちゃん。」
「何よ、私は絵を買っただけよ。」
私たちはぎゅっと手を握り合った。
そのうち、絵は完成した。
アリスちゃんは大喜びで絵を綺麗な額縁に入れ、お店に飾ってくれた。
「いや〜本当に素敵!」
「気に入ってくれてよかった。」
「特に海がいいわ。青が綺麗だもの!」
「…青色の表現は得意だよ。」
あ、またやっちゃった。
…どうしても青色には力入れちゃうんだなあ。気持ち悪い、私。こんな時まで無一郎くんのことを引きずるか…!!
「ねえ、SNSにのせてもいい?」
「いいよ。…あ、でも私の名前は……。」
「わかってる。 ちゃんが仕事じゃなくてプライベートで描いてたんだもんね。シンプルに絵を買ったってのせるよ。」
さすがアリスちゃん。できる女すぎる…。