第33章 みんなの幸せ
「7週目ってところですね」
次の日、アリスちゃんと病院に言った時に言われた。私は壁にかけられたカレンダーを眺めた。
……ああ。
どうしよう、心当たりしかない。
まあ、十中八九実弥だよね。だって彼以外とはそういうことしないもん。…避妊ってしなかったんだっけ。
いや、実弥はそこら辺はちゃんとしてた。でも100%じゃないっていうか。…それでも奇跡的な数字じゃないの。
「おめでとうございます」
私は、にこりとも笑えなかった。
これで妊娠のお墨付きができた。…あの日の朝に感じた気配は確かに我が子のものだった。
「…とにかくおめでとう、だね。なんか食べに行く?」
「……。」
「そんな気分でもないか。でも、ゆっくりもしていられないよ。…子供は待ってくれないんだから。取り返しがつかなくなる前に決めなきゃいけないんだよ。」
アリスちゃんははっきりと言い切った。
「産むの?産まないの?」
……。
あんまり知識はないけど。
7週目くらいって言われたからには…。中絶、するにも期限がある。これから先、一人の人間を育てていくってことだよね。
…実弥には黙っていたけど絵の仕事も少しずつだけど再開してる。貯金も少しだけ残ってる。
言ってしまえばシングルマザーってことだよね。誰か頼れる人がいないと不安…。おじいちゃんとおばあちゃんには…迷惑かけたくないし。
「悩んでるの?」
「…育てていけるかどうか……」
「はあ?私そんなこと聞いてない。産むか産まないかって聞いてんの。」
アリスちゃんはギロリと私を睨んだ。
「…そりゃ、産んであげたいよ。私…子供ができない体って言われてたし。」
「え!?そうなの…?なんでそれを言わないの!!」
「そ、それどころではなく…高校の時にそう言われた。」
「じゃあその診断した先生がいる病院に行こっ!ね!?」
「えええええ今から!?」
「当たり前でしょ!!」
アリスちゃんの行動力にはおどろいてしまう。私は彼女が運転する車に乗せられて、あれよあれよと言う間にかかりつけの産婦人科に到着してしまった。