第33章 みんなの幸せ
「ばか」
アリスちゃんは私をぎゅっと抱きしめた。
「それは、辛いわ。」
彼女も泣いていた。
「はああああああ。あんたってなんて良い子なの。いやあ〜ジレンマねえ、わっかるわぁ…。でも男もいいやつじゃん。よしよし。」
「あ、アリスちゃん…」
「相手の男の幸せ願って…はああああ。それって何?相手の男に女の気配がしたとか?」
「……ハハハ。」
え、アリスちゃんってエスパー?
「やっぱ最低じゃない!」
「いや、あーーーーー…そんなんじゃないって彼は言ってた。それは嘘じゃないってわかってるから。」
「なんでそんな女のために別れちゃうの!恋のライバルってことでしょ!?」
はああ、と彼女は深いため息を吐き出した。
「まあーーー相手の幸せを願う気持ちはわかる。」
「…わかるの?」
「うんうん、乙女心?ていうかちゃん高校の時から遠慮の塊みたいなとこあったもんねえ。」
彼女はゴシゴシと私の涙を拭ってくれた。
「それがいいところじゃん。なんか変わってなくてホッとした。」
アリスちゃんはにこりと笑う。
……いいところ。
私の、いいところ。
「でも」
「ん?」
「みんな、私を怒ったの。私なんてどうでもいいって言ったら、みんな。」
アリスちゃんは首をかしげた。
「は?個人の自由じゃん?まあそう言った人たちは会えて苦言を呈してくれてるんだからいい人たちだろうけど、私の友達泣かしたら全員悪者よ。」
「……」
アリスちゃんはキッパリと言った。
…。
ああ、彼女こそ変わってない。誰に対してもこんな感じの子だったなあ。
「悪者って…いい人たちだよ。」
「ええそうね。なんと言っても私の友達の友達ですから。」
アリスちゃんはにこりと笑った。
「まあ、大体のことはわかったからいいわ。もともと住んでた人も戻って来れるかわからないし、できる範囲でお店を手伝ってくれたら全然ここにいてもらっても構わないわ。
でも、あなたをここに住まわせるなら私にも責任があります。明日、朝イチで病院行くよ!」
彼女は力強く私の手を握った。まるで、大丈夫だと言うように。
「…ありがとう」
私はぎゅっと彼女の手をにぎり返した。