第33章 みんなの幸せ
ドラッグストアに行った後は、アリスちゃんが運営する下宿兼お弁当屋さんに向かった。
「ここが貸し出してる部屋ね。」
中は畳ばりの和室で、窓の外には海が見えた。
「水道もガスも止めてないの。全部今すぐ使えるよ。」
「…いいところだね」
「まあ、立地は拘ったかな。はいこれ。」
アリスちゃんはドラッグストアで買ったものを私に差し出した。
「私もそばにいるからさ。やっておいで。」
「……うん。」
妊娠検査薬だった。
過去にも使ったことがある。……あの時は全然ダメだったけど。
数日前から自分の体内に、何者かの気配をしっかりと感じるようになった。前世でも感じたことがある。
父親に、乱暴された後の、忘れもしないあの感覚。
「トイレ、ここね。」
アリスちゃんに背中を押されてトイレに入る。…しばらく使われていないって言ってたけど、綺麗だな。
……。
そんなことを考えながら、私は震える手で箱を開けた。
「どうだった」
トイレから出ると、アリスちゃんがぐっと私に詰め寄った。私は彼女に検査薬を見せた。
「……」
アリスちゃんはそれを見て、黙って私の手を引いた。
トイレからさっきの畳の部屋に戻った。そして、座布団を出してくれて、私の荷物を中まで運んでくれた。
「座って。お茶とか出ないけど。」
「あ、うん。」
二人で座布団の上に正座する。
「はあああああーーーーー。私、すごく緊張してるわ。こんなこと初めてだから。」
アリスちゃんはそう言ってから真剣な顔になって言った。
「とりあえずお疲れ。で、この結果が出たわけだね。」
私は手の中の検査薬を見下ろした。
…。
はっきりと、陽性の証の線がそこにはあった。