第33章 みんなの幸せ
…友達だから、助けてあげたいのは山々だけど。
「私、できるかわかんない…」
「お惣菜をパックに詰めてくれるだけでいいの!お願いお願い!!私を助けて!!ちゃんっ!!」
「ええ…」
「もうずっとお休みないんだもん!とはいえ、お店を閉めたら食べていけないし…。」
アリスちゃんの目にどんどん涙が溜まっていく。
…ああ。
だめだ、無下にできない。
「えっ……と」
「…やっぱり…ダメだよね。ごめんね、急に変なこと言っちゃって。」
「あ、いや、そうじゃないの。働けて部屋を貸してくれるならとっても嬉しいのよ。でも…。あー、その。」
「何?」
アリスちゃんがこてんと首を傾ける。
「……その、私、ね」
「うん」
「あまり具合が良くないっていうか」
「風邪?」
「…そうではなく、えー、その」
私はぎゅっとお腹をおさえた。
「え、下痢?」
「違うよ!!」
「ノロウイルス?」
「それなら入院するってば!!」
「…え〜昨日生ガキ食べた?」
「…食べてないよ。」
はあ、とため息をついて視線を下に落とした。
「まだ確信ないの。怖くて検査とかしてないし。あと誰にも言ってない。」
「検査……お腹…怖い?」
アリスちゃんはぶつぶつ呟いた。
そして、あ、と声を上げた。
「……え、ウソだよね」
「…わかんないんだってば」
「ちょ、ちょっと」
アリスちゃんは明らかに慌てていた。
「…妊娠ってことであってる?」
はっきりと彼女はそう口にした。
私は何も答えなかった。アリスちゃんはそんな私を無視して弾かれたように立ち上がった。
「ドラッグストア行こう。すぐそこにあるの。」
「………嫌だよ」
「嫌とか嫌じゃないとか、そんなこと言ってる場合?どんな選択をするにしても、それは無責任じゃないの。」
アリスちゃんはそう言いながら私の手を引っ張った。
渋々私は立ち上がり、重い足取りで彼女のあとをついていった。