第33章 みんなの幸せ
海のそばが良い。
電車に乗って移動した。海のそばが良かったが、一度悲鳴嶼先輩と会った砂浜はまずいと思ったので、そことは違う場所にした。
まあ、海に近ければどこでもいいのだが。しかしそうは言っても、どこで暮らすとかは何も決まっていない。
もっとゆっくり考えればよかったと思うこともないが、あれ以上あの場所にいることはできなかった。
念願かなって海のそばにくることができた。うん、と伸びをして思い切り潮風を吸い込む。
うん。やっぱり海はいいな。
「でもやっぱり宿無しはきついかも…」
野宿なんて時代錯誤にも程がある。私ははあ、とため息をついた。
「えっ。宿無し?」
その時、誰かが私に声をかけた。
いつの間にか私の後ろに見知らぬ女性がいた。……。
え、うわ、恥ずかし。
私は羞恥のあまり顔が一気に赤くなった。
「い、いえ、独り言、ですので」
「はあ…いや……って、もしかしてちゃん!?」
名前を呼ばれて、ん?と彼女の顔をよくよく見つめる。
「……あ…アリスちゃん?」
「うわああああ!!久しぶり!元気だったああああ!?!?!?」
彼女は大はしゃぎでニコニコ笑顔で勢いよく私に抱きついた。持ち前の体幹でぐっと堪えた。