第4章 夢想
「よりいちさん」
自分の声で目を覚ました。
弾かれたように目を開ける。飛ぶように起き上がると、部屋の隅から悲鳴のような声が聞こえた。
「え??え?よ、よりいちさんって……誰???」
「あ、え??ハルナちゃん?」
そこにいたのは思いもよらない人物だった。
桜ハカナの妹だ。
そして、がらがらと病室のドアが開けられ、姿を見せたのは優鈴だ。
「あれ?うっそ起きてんじゃん。あれー。僕聞き間違えたかなぁ?」
優鈴が首をかしげる。
「一週間前から寝たきり目が覚めてないってシンダガワくんから聞いたんだけど?」
「いや、シナズガワだから。」
と突っ込んだはいいものの、私は目を見開いた。
「ええッ!?一週間前!?!?リカイデキナインデスケド!?」
「うーん?え、でもさ、そう聞いたよね、ハルナちゃん。」
「は、はい……」
ハカナちゃんはおろおろとしていた。
「……オーケーちょっと待った。頭整理する。」
「いやその前に医者呼ぶから。」
優鈴は躊躇いもせずナースコールを押した。
一週間前。つまりご飯を食べて気絶したあの日かららしい。
「ええ~信じられないんですけどぉ。ご飯を食べても胃液吐いて過呼吸になって気絶?先生それ本当なんですか?」
私は自分でスプーンを持ってモグモグと租借していた。
「どっからどう見てもめちゃくちゃ元気なんですけど。」
優鈴が言う。
先生も苦笑いだった。
味のないべちゃべちゃで柔らかいおかゆ。お腹が空きすぎてどうにかなりそうだったので用意してもらった。
今回眠っていたのは昏睡でもなく、ただ本当に寝ていただけだった。一週間眠り続けた私はなぜかものすごく元気になっていた。
「お腹もすくし、手も動くし、たくさん喋れるようになった。」
「スプーン鷲掴みだけどね。」
「指の細かい動きは難しいかな。でも全く動かなかった左手が!ほら!!」
私はひらひらと手を振ってみせた。だいぶ感覚が戻ってきた。
「いや、医者からこう言うのもどうかと思いますが…霧雨さんは奇跡の塊みたいな人ですね。」
先生はにこりと笑って言った。