第4章 夢想
真っ暗な闇が続いていた。
不安だったけど、ずっとその人は私の手を握ってくれていた。誰かはわからないけど、ひどく懐かしかった。
『阿国、お前はいつも笑顔だったな。』
その人は話し始めた。
『その笑顔に救われた。ありがとう。うたの着物で巾着を作ってくれた時も、本当に嬉しかった。』
だが、その内容はよくわからなかった。
『私はお前に何もしてやれなかった。お前は…兄上に……。』
その人はずっと話していた。
『………すまない。君は阿国ではなかったな。』
唐突に謝られた。
何なんだ。
『……君はたくさんの人に愛されているのだな。阿国と同じだ。』
愛されている?私が?そんなの嘘だ。私はいつもいつも嫌われていた。
『さあ行こう。皆待っているぞ。』
その人は確かに私の手を引いた。
カラカラ…と音がした。その方向を見ると、風車が一つ地面に刺さっていた。
カラカラ、カラカラと風もないのに回っている。
『……懐かしいな。』
その人は、悲しそうに微笑んだ。
『………阿国はあれを喜んだ。あんなもので喜んだのだ。些細なことで笑って、泣いて、怒る子供だった。』
独り言のように続けた。
『君のように。ほら、もう行くと良い。』
するりとその人は、私の手を離した。
?どうして?一緒に行かないの?
『私は行けないんだ。』
??
『君と同じだ。ここにいるのは過去の私だ。だからそちらには行けない。今の私がそこにいるから。』
わからない。理解できない難しい。
『ありがとう。話せて良かった。』
その人はにこりと笑った。
カラン、と耳飾りが音をたてて、風車がまわる。