第30章 晩夏、初秋
結局実弥は何も答えなかった。
「気づけばもういないし」
朝目が覚めたら私を置いてさっさと出かけたらしい。…どこに行くとか、聞いておけばよかったな。
ずっとイライラしていたな。なんか、昨日は八つ当たりしたかっただけみたいだったけど。…まあ、彼がスッキリしたならそれで。
「……布団干さなきゃ」
いつまでも裸でいるわけにはいかないし、いつも通り動こう。
布団を干したあと、ぶらぶらと買い物に出かけた。
カルシウム重視の魚料理も飽きてきたし今日は盛大にお肉にしよう。牛肉なんてどうだろう。
実はちょっとずつ仕事を再開して、お金に余裕が出てきたんだよね。なのでここは景気づけに…。
スーパーで豚肉か牛肉かを真剣に考えていると、とん、と後ろから肩を叩かれた。驚いて振り返ると、そこには…。
「須磨さん…」
「やっぱりちゃんだあー!!」
肉の種類で頭悩ませて気配に気づかないとか情けなさすぎて悲しくなってくるんですけど!?!?
「久しぶり!お見舞い以来だね。体調はどう?」
「あ、もうほとんど元通りで…」
「それはよかった〜!ねえねえ、今日みんなでお出かけに来てるの!ちゃんも一緒に行こ!」
「え、いや、それ私はおじゃま虫では!?」
「そんなわけないよ!」
いやそんなわけあるだろ…って力強いな。
さすが元クノイチ…とかなんとか言っているうちにあっという間に宇髄御一行に合流してしまった。
「あら?どうしてちゃんが…」
「おー、霧雨。久しぶりだな。元気か?」
「元気ですよ…。」
「こらあ!須磨!あんた無理に連れてきちゃだめでしょ!!」
「うわあああまきをさんがいじめるうう!!」
…。
いや
ちょっとちょっと。
何これ。