第29章 海は広くて大きいが
「落ち着いたか」
これは
これは非常にまずい。
まるで半身浴みたいに海水につかった私を、悲鳴嶼先輩は哀れみの目で見つめていた。
『いつまでもそうしていては寒いだろう。』
そう言いながら私を引っ張って立たせてくれた。
『私は何も気にしていない。ああいう間違いは誰にだってある。』
先ほど“行冥”と呼んだことを言ってるらしかった。
その優しさが、痛いほど心と体に染みた。
『う……ぁ…』
『?どうした』
『うあああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!』
先輩が珍しくぎょっとしていた。
私は、赤ちゃんみたいに海でギャン泣きした。
それから先輩が何を言って慰めても私は泣き止むことはなく、声をあげてボロボロと泣いた。
先輩は私の背中を押して海から離れ、近くにある日帰り旅行のサービスをやっている旅館まで連れていってくれた。
『ゆっくり温泉にでもつかってきなさい』
と私を女湯へ送り出してくれた。
そうなる頃には落ち着いていて、部屋に戻ったところで今に至るのである。