第28章 欠けたところ
熱中症でダウンしたのでその日は大したことができなかった。
疲れているのなら風呂に入ってゆっくりすればいいと言ってくれたので、私はお言葉に甘えた。
「え。着替えとタオルが置かれてる。」
「自分のタイミングで入れよ。」
ねえ待って泣いていい??なんでこんなに優しいの???しかも今すぐ入れとは言わないし??
私が感動していると、ポケットの中のスマホが震えた。誰かからメッセージが来たのだと思ってすぐに確認する。
『近いうちに会えないか?話がしたい』
無惨からだった。
私はぼーっとして湯船に浸かっていた。
ん?
ああ、まあ。そりゃ色々ケリをつけるべきことがあるね。
……これ、実弥に言うべき?
(一人で勝手に行動しないってあったけど、これも勝手に行動することに入るのかな)
……。
まあ、でも。私個人の問題に巻き込むべきではないよ。
(話す、と言っても)
お風呂場の天井から水滴がぽたりと垂れた。肩に当たった。冷たい。
(どこまで、話す?)
ぼんやりと天井を見上げていた。
もう水滴は落ちて来なかった。
お湯の中は心地が良くて、ずっといたいと思ってしまった。
それがいけなかったらしい。ぼんやりとしていると、外から実弥の怒鳴り声がした。
「おい!まさか風呂で寝てねえよな!?」
「ハイっ!もちろんです!!!」
慌ててお風呂から出ると、ドアの前の実弥とばったり遭遇した。
「……。」
実弥は無言で視線を逸らす。
「……ちゃんと体拭けよ。」
「…うす。」
ぎこちない動きで出ていくので、申し訳なくなった。…私ってばどうしていつも無鉄砲に動いてしまうんだろうか。